Daryl Jamieson

composer

2017年3月17日 バス•クラリネットと弦楽四重奏と録音機のために「here, today」を世界初演

バス・クラリネット、弦楽四重奏、そして録音機のための作品「here, today」が2017年3月17日(金)、「思想時代」という演奏会シリーズ第7回、岩瀬龍太氏とロリエ弦楽四重奏団によって初演されます。本作品では初めてステージで録音機を使います。わたしにとっては実験的な逸脱、東京にいらっしゃる方はぜひ聴きにいらしてください!

会 場: 淀橋教会(大久保)
と き: 2017年3月17日(金)
開 演: 18時半 (開場:18時)

チケット情報は下のチラシで書いています。

プログラム・ノート


録音・録画、また写真というフィルターを通過することで、私たちの世界の知覚の仕方は徐々に間接的なものになりつつある。どういった録音を聴くか、またどんな写真を見るかという選択においても、ほとんど誰も理解していない(あるいはその存在すら知られていない)ソーシャル・メディア・アルゴリズムというフィルターが介在することになった。人々は共有された現実(または共有された非現実)の代わりに、自分がリアルだと信ずる、しかしいかなる他者も認識し得ないような「私のリアル」を構築するようになったのだ。社会や環境に関する集団的決定の根拠となる、共有されたリアルに則ってあるべき国家=統治体に対し、こうした状況は悲惨な影響を与えてきたし、当面このネガティヴな傾向に変化は見られないであろう。
「here, today」は環境情報を複製・再現し、しかもそれを共有しようと試みる作品である。弦楽器奏者は演奏当日、自宅や滞在先で録った環境音を曲中で再生する。作品前半はクラリネット奏者によってそれ自体が録音され、曲の後半で再生される。演奏者、作曲家の判断や録音・再生機器をめぐる種々の制限、それらの全てが当日聴かれる演奏に影響してゆく。演奏はその度ごとに違ったものとなるため、聴き手はその都度、微妙に違った作品を聴くことになるのだ。こうして無限に存在し得る本曲中に、一つでも真のリアルを反映しているものがあるだろうか?
思想時代 vol.7